SNSで発信される数えきれないほどの人々の数えきれないほどの言葉や情報が全て本当だなんてあるはずがないことは分かっているので、そのへんは理解した上で「へぇ~、ほぉ~、ふぅ~ん」って感じで適当に楽しみながらいつも見ているのですが(見るだけで自分からは発信していませんが)、先日、偶然目にしてしまったポストを読んで、ちょっと苦い記憶がよみがえって来てしまいました。
私がこれからこの記事に書くことはセンシティブな内容なので、場所や時間や個人の特定に繋がらないように、細かな情報は全て伏せて書かせていただきます。
偶然見かけたポストに感じたもやもや
まず、私が偶然目にしてしまったポストがどのような内容だったか本当にざっくりと端折って書かきますと、「お亡くなりになっている人を見つけました」「自分で命を絶たれたみたい」「自分は第一発見者として警察に連絡し」「警察の方から連絡してくれてありがとうと大変感謝され、お礼を言われました」「私が第一発見者になったのは私の使命だったんだと思います」と言った、正義感に満ちた感じの内容でした。
普段なら偶然見かけたポストくらいなら気にも留めないのに、どうしてだか?このポストの何かが心の中で引っ掛かって、もやもやっと違和感を感じてしまったのです。
私と何の関係性も無い話しだし、ましてや、このポストを書いた人がどうこうと言う話でもないのに、この引っ掛かる感じは何?このもやもやする違和感は?と、そのポストを見たまま一瞬フリーズして考えてしまいました。
そして、「何だ?」と考えている私の頭の中の記憶のトンネルの向こうから、シュッと蘇って来てしまったのは、何となく後味の悪い苦い記憶でした。
通報
実は、私も過去に第一発見者になってしまったことがありました。
とあるビルで、目線の先に窓がある場所のデスクに座っていた時に、一瞬、窓の外に何かが落下していったような影が見えて、次の瞬間「ドーン…」と音がして、「え?何か荷物が落ちたの?」と思わず窓に近づき鍵を開け、恐る恐る下を軽く覗いてみたところ、靴を履いたままの足元がチラッと見えてしまいました。
「うっ…人だ…」と分かった瞬間に私は慌てて窓を閉め、そのまま走ってエレベーターの所まで行って1階まで降りて、そのビルの1階のフロントに立っていた警備員に「人が落ちてしまったようです!」と通報しました。
警備員は瞬時に「場所はどこですか?」と私に聞き返してきたので「あちら側です!」と答えると、ベルトに付けていた無線機を手に取り、急いでどこかに連絡をしながら走って現場へ向かわれました。
まさかの出来事に私も無我夢中で1階のフロントまで走りましたが、警備員に通報した時点で私に出来ることはもうそれ以上は無いので、再び自分がいたフロアに戻ろうとしました。
すると、通報の一部始終を見て私の横に一緒に立ってくれていたフロントの女性の方に「すみません、念のためにお名前とご連絡先を教えていただけますか?」と聞かれたので、名前と自分がいるフロアを伝えてから、戻りました。
そしてしばらくすると、パトカーや救急車や消防車などの緊急車両のサイレンの音がビルの外に集まってきているのが聞こえてきたので、この事故について対応してくれたんだなと分かり、ほんの少しホッとしました。
ところが、私の苦い記憶として残っている出来事はここから始まりました。
第一発見者としての苦い記憶
警備員に通報してから30分ほど経った頃、フル装備の消防士が私の所までやってきました。
たぶん、フロントの女性から私の連絡先と名前を聞いて来たのでしょう。
ただまぁ、事態が事態なだけに公安職の方が来ても不思議なことではないので「なばなさんですか?」と聞かれても慌てることもなく「はい、そうです。」と答えると、消防士からの質問が始まりました。
「どこから落ちたのですか?」
想像していなかった質問に、最初、私は何を聞かれているのかが分からなくて少し黙ってしまいましたが、すぐに「えっ?…分からないです。」慌てて答えましたが、慌てる私の言っていることを無視するかのように、次々に質問は続きました。
「どうして落ちたんですか?」 「知りません。」
「どんな感じで落ちたんですか?」 「どんな感じって……この席から、あちらの窓の方を偶然見ていた時に、上から何かが落ちてきたのが見えました。」
「あの窓ですか?」 「はいそうです、あの窓の左側でした。」
幾つかの質問の後、「・・・はい、分かりました。」と言って消防士はやっと去って行かれましたが、質問の内容があからさまに私を疑っているものばかりで、まさか疑われるとは思ってもいなかった私は驚いてポカンとしてしまいました。
そうこうしているうちに、次に警察官がやってきて、もうここまで来ると質問と言うより尋問が始まりまして、
「何時頃だったか覚えていますか?」 「今から40分くらい前だったので、14時半頃でした。」
「落ちた方のお名前は?」 「えっ?…知らないです。」
「お知り合いですか?」 「いや、知り合いでもないです。」
「会ったことがあったり、顔を知っていたりしませんでした?」 「まさか!会ったこともないですし、そもそも、下を見て靴の足元が見えるまでは…最初は何が落ちて来たのか、人が落ちて来たかどうかも分からなかったのに…(◞‸◟)」
確実に疑っている質問ばかりで、このまま誤認逮捕とかされてしまったらどうしようと心臓がドキドキして怖くなってきましたが、何とか警察官の顔を真っすぐ見ながら答え続け、やっと警察官が去って行きました。
心中穏やかでなく複雑な気持ちになってしまいましたが、やっと尋問が終わっと思ってホッとしていたのですが、なぜかまた最初とは別の消防士がやってきて、この期に及んでまだ「一緒にいた時に落ちたとかではないですか?」「何で落ちたか教えて下さい。」などと聞いてきたので、このへんまで来ると私もいい加減ドキドキが怒りに変わってきまして
「いや!ですからっ!先ほども警察官の方にも言いましたけど!全く知り合いではないです!」
とちょっと切れ気味に答えたところで、やっと何か納得したのか?消防士は「はい、ご協力ありがとうございました。」と言ってさっさと帰って行き、やっと尋問と容疑者の疑いから解放されたのでした。
もう二度と第一発見者にはなりたくない!
あの時、私は衝撃の出来事に直面して、「関わらない方がいいな」と見て見ぬふりも出来たかもしれないけれど、真っ先にビルの警備員に通報しました。
私の中にある無意識レベルの責任感だったのかもしれません。
その結果、公安職の人たちに疑われて、何度も尋問されて、誤認逮捕の恐怖を感じ、何とも後味の悪い苦い記憶を残したのです。
そんなことがあったので、SNSのポストで偶然見かけた「警察の方から連絡してくれてありがとうと大変感謝され、お礼を言われました」が本当ならば、私の尋問はいったい何だったんだろう?と未だにネチネチと根に持っている私の気持ちが、心に引っ掛かる感じだったり、もやもやする違和感だったのだと判明したのでした(^^;
ただまぁ、公安職の人たちだって、任務を遂行していただけのことでしょうし、それは仕方のないことなのだと今なら分からなくもないです。
だとしても、私は「私が第一発見者になったのは私の使命だったんだと思います」なんて思うことは出来なくて、「二度と第一発見者になるのはまっぴらごめんだわ」と思っております。
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