【本当にたたかったお嫁さま】その48.引っ越しの日

・本当にたたかったお嫁さま

前回の【本当にたたかったお嫁さま】その47.「引っ越し業者のナンパ?」では、

2000年11月下旬、引っ越しの当日がやってきましたが、なぜか引っ越し業者のリーダーらしき人がやたらと話しかけてきて、引っ越し作業は他の2名にまかせっきりで一向に作業をしません。

ナンパ?

挙句の果てに、プライベートな事まで遠慮なくため口で聞いてくるようになったので、私の寛仁袋の緒がぶっちぎれ「結婚で婚約者の家に引っ越します。」と冷ややかに言い放って撃退し、引っ越し作業に戻らせました。

こうして着々と引っ越しの荷物の搬出作業が進んでいく中、意外にも、あれほど私とは一切口をきこうとしなかった母が私の部屋にやってきました。

今日はそのへんのお話をしたいと思います(^^)

 

引っ越し当日、引っ越し業者のまさかの早朝到着で朝からとんでもなく慌ただしいことになってしまいましたが、そのおかげでと言ってはなんですが、荷物の搬出の指示などの作業に追われて、私を徹底的に無視し続けていた母のことを気にかけている余裕はもう完全になくなっていました。

粛々と引っ越し作業や、引っ越しの書類の確認やサイン等をして、荷物も既に2/3ほど搬出が終わっていよいよ部屋の中がだいぶガランとしてきた頃、私はぼんやりと「もう、このまま母と顔も合せないまま家を出ていくことになるのかな…」と思ったりしていたのですが、驚いたことに、1階の居間に姿を消していた母が2階の私の部屋に突然やってきたのです。

母は相変わらずのしかめっ面で、また何か怒鳴られるのか?と私は身構えましたが、母の手には、ずっと使われずに台所の戸棚の中に眠っていたホーロー鍋と、母が前に使っていたけどもう使わなくなっていたタッパーウェアの製品が幾つか。

「アンタ、これ持って行けば。あれば使うでしょ。」

とだけ言って、再び1階に降りて行きました。

ずっと私の事を完全無視していた母の方から話しかけてくるとは思ってもみなかったので、正直、ポカンとするほど驚きました。

それに、娘の門出にずっと使っていなかった鍋1つと使わなくなったタッパかい!とも思いました。笑

ぶっちゃけ、毒親の母は対外的な体裁をもの凄く気にするので、鍋などを私にくれたのは引っ越し業者に対して一応「母親として娘のためにちゃんと気遣ってあげているんですよ」という体裁を取り繕うための必要最低限のパフォーマンスであることは毒親育ちの私にはピンときてしまいましたけど、それでも、ずっと私の事を完全無視していた母の方から最後の最後に話しかけてきたことは、母として最大の譲歩だったかもしれないので、とりあえずありがたく鍋とタッパも引っ越しの荷物に加えたのでした。

 

そうこうしているうちに荷物は全てトラックに乗せ終わり、撃退した引っ越し業者のリーダーらしき人から「では、トラックは出発します。2時間ほどで到着予定です。なばなさんは電車で移動していただいて、現地でお待ちしております。」と業務的に説明を受けて、私はトラックを見送りまして。

カレの家にトラックが先に到着するか私が先に到着するか分からないくらいの時間しかなかったので、私は急いでたった1つ残した自分の鞄だけを肩にかけ、玄関に向かい、最後にダメ元で居間にいる母に向かって「トラックが出たから、私ももう行くね。」と声をかけてみました。

すると、母が黙ったままでしたが玄関まで来てくれたので、私にとってはお礼を伝えられる最後のチャンスです。

「朝からバタバタしちゃって、ごめんね。それじゃあ、どうもありがとうね。お父さんにも仕事から帰ってきたらお礼を伝えておいてね。とりあえず向こうに着いたら電話するね。」と伝えると「分かった。」とだけ答えてくれたので、私は母に頭を下げて実家を後にしたのでした。

 

子供の頃は、結婚して家を出る時は両親の前に三つ指ついて頭を下げて「お父さん、お母さん、育ててくれてどうもありがとう。」なんて感謝の言葉を伝えたりするものなのだろうと思っていましたけど、そんな挨拶も出来ず、学生の頃から数えきれないほど「鳥かごのような実家から出たい」と願っていた割には、引っ越し当日あまりにも慌ただし過ぎて意外とあっけない門出でした。

でも、実家を出る寂しさなんて、もちろん私にはあるはずもありませんでした。

ただ、カレとの結婚を決めた時に私は両親とはもう一生会うことは無いかもしれないと覚悟をしていたので、「向こうに着いたら電話するね。」と言った私に母が「分かった。」と答えたと言うことは、私の門出が今生の別れにはならなくて済みそうだなと思って、ちょっとホッとしたのを覚えています。

こうして私は、実家の坂の下にあるずっと私の心のよりどころになってくれていた神社にご挨拶をしてから駅に向かい、一人電車に乗って引っ越し先のカレが暮らしているワンルームマンションへ向かいました。

見慣れた車窓から見える町の景色が、いつもより明るくキラキラ輝いて見えました。   ~ つづく ~

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