私の実家周辺はどこまでもただただ住宅街が広がっていて、閑静な住宅街と言えば聞こえはいいのですが、閑静過ぎちゃって近所にスーパーやコンビニも無いから(^^;買い物をするなら坂道だらけの町を20分くらい歩いて駅前の方へ行かなければならない不便さがありました。
そんな何もないザ・住宅街だからこそ?なのかもしれませんが、時々「た~けやぁ~~さおだけぇ~~」の物干し竿を販売する軽トラとか、「やぁ~きいもぉ~~♪やぁ~~きいもぉ~~♪」の焼き芋屋さんの軽トラが定期的にやってきては、ゆっくりとしたスピードで町内をぐるぐるとまわって販売をしていました。
それで私、子供の頃からちょっとした憧れがあったんですね。
毎週日曜日の夕方になると放送されているサザエさんで、家の近所に焼き芋屋さんが来た合図の「やぁ~きいもぉ~~♪やぁ~~きいもぉ~~♪」の声を聴くや否や、サザエさんがお財布だけ片手に持って家を飛び出して焼き芋を買いに行くシーンを何度か見て、なんか、私も焼き芋を買いに行ってみたい!と思ったんです。
でも、家の近所に焼き芋屋さんが来たとて、子供の私が焼き芋を買いに行くような散財を母が許してくれるはずもありませんで、サザエさんのように家を飛び出して買いに行って、家で茶をしばきながら熱々の焼き芋を頬張る夢は叶いませんでした。
こうして月日が流れ、私が社会人になった頃にはもう物干し竿や焼き芋を売りに来ることがたぶんほとんどなくなり、私が初めて焼き芋屋さんの焼き芋を食べることが出来たのは、家の近所に売りに来た焼き芋屋さんではなく、夫と結婚してから初詣で行った靖国神社の前に来ていた焼き芋屋さんでした。
寒いお正月の夕方に、焼きたて熱々でしっとり甘い焼き芋の美味しさったら、今でも忘れられません。
やっぱり家のグリルで焼く焼き芋よりも、焼き芋のプロである焼きも屋さんの石焼きの焼き芋の方が、はるかに美味しいと知り、また機会があったら焼き芋屋さんの焼き芋をまた食べたいなと思っていました。
そんな私に、ある日突然チャンス到来!
今住んでいるマンションに引っ越して来て数年経った頃の、日も暮れかかった夕方のことでした。
テレビも点けずにリビングで用事をしていた私は、焼き芋屋さんのあの「やぁ~きいもぉ~~♪やぁ~~きいもぉ~~♪」のメロディーが聞こえたような気がしました。
え?まさかこの辺に焼き芋屋さんが来てるの?!
私はすかさずリビングの窓を開けて軽くベランダに身を乗り出し、黙って耳を傾けました。
すると今度は、間違いなくあの焼き芋屋さんのメロディーが聞こえてきまして、私はこのチャンスを逃すわけにはいかないっ!!!とばかりに、サザエさんのごとくお財布片手に家を飛び出し、マンションを飛び出し、焼き芋屋さんのメロディーがする方に近づいて行きました。
すると、マンションから50メートルくらい先の道路に止まっている焼き芋屋さんらしき軽トラックを発見!
私はウキウキが隠せないくらいの笑顔で車に近づいて行きました。
なのですが、20メートルくらいまで近づいたところで、異変に気付きました。
聞こえてくるメロディーは確かに焼き芋屋さんのあの「やぁ~きいもぉ~~♪やぁ~~きいもぉ~~♪」のメロディーなのに、なのに!
なんか、音が反響して最初はよく聞こえていなかったんですけど、「やぁ~きいもぉ~~♪」って言っていないのです。
えっ?なんて?なんて(??)
恐る恐る車に近づきながらそのメロディーに耳を傾けていたら、聞こえてきたのは、焼き芋屋さんのあの「やぁ~きいもぉ~~♪い~しやぁ~~きいもぉ~~♪」のメロディーではあるものの
「ぎょ~おざぁ~~~♪ぎょおざぁぁぁ~~~♪」
・・・ぎょ・・・餃子(;゚Д゚)
まさかの出来事に、ハッキリ言って私はうろたえましたね。
そして、まさかの餃子に「本当に餃子なのか?」とにわかには信じ切れず、私はさり気なさを装いながら車の横を通りつつチェックしてみたところ、掲げられていたメニューは「餃子6個○○円」「餃子10個○○円」「海老餃子・・・」と、確かに餃子だったのでした。
もうね、人生で初めて勇気を出してサザエさんのようにお財布だけ持って家を飛び出して焼き芋を買いに来たのに、餃子って、そりゃ~ないでしょ~もぉ~~~ぅ( ̄д ̄)
しかも、このメロディー!本当に紛らわしいじゃない!!!
ダメでしょ!焼き芋屋さんのメロディーをパクったら!!!
甘い焼き芋を食べれる気満々になっていたのがお預けになって、意気消沈して家に戻ったあの日。
私は未だに忘れず根に持っていますよ。
ええ、食べ物の恨みは恐ろしいのです。
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