もう5年くらい前の冬のこと、私は「そうだ!下車したこと無い駅で下車して知らない街を歩いてみよう!」と急に思い付いて、縁もゆかりもない駅に降り立ったことがありました。
もう何駅だったかも忘れちゃったんだけど、地下鉄の駅から地上に出たら目の前がかなり車線の多い幹線道路沿いで、正直言うとかなり殺風景な感じ。
駅前の商店街とか、閑静な住宅街とか、知らない街を散策しちゃうぞ~とワクワクしていたのにちょっと肩透かしにあったような気分になったのですが、そこで諦めずに駅の裏手の方をしばらく歩いてみたところ、店の数はさほど多くはないけど昔はこの通りが地元の商店街だったのかなと思われる懐かしい雰囲気の通りを発見したのです。
昔からやっている感じのパン屋や陶器店などがあって、私は導かれるかのように陶器店へ行ってみると、なんと、ずらりと並ぶ土鍋の数々、そして「土鍋半額セール!」の文字が!
当時家にあった土鍋は夫が独身の頃に先輩があまり使わないからと譲っていただいたものだそうで、それを結婚してからもずっと使い続けていたので、トータルでもう何年前から使われているのか分からないくらいの年代物でした。
土鍋の外側の底とかに焦げ付いて洗っても落ちない汚れなんかもあって、新しく買い替えようと思っていたところだったので、大喜びで足を止めて店の前に並んだ土鍋を見始めたのでした。
陶器店のご主人登場
するとそこに、「店内にも色々土鍋、あるよ。」お店のご主人が登場。
まるで、テレビドラマのHEROに出てくるバー「St.George’s Tavern」のマスターのよう。笑
そのまま土鍋のサイズについてや窯元はどこだとか色々説明を詳しくしてくれて、そのうち、お店のご主人の年齢に始まり(御年82歳(驚)とてもお若く見えました)。
ご実家が信楽焼きの窯元なのだ、とか。
中学高校と京都の学校でバリバリ野球をやっていたから今も野球は好きで、阪神が好きで巨人が嫌いよ、とか。笑
自分はお酒は飲めないから食道楽で、あの店はいいよ、あの店は残念だったよ、とか。
などなど、などなど、ご主人が歩んでこられた半生のお話に引き込まれ、おしゃべりに花が咲き、気づいたらアッと言う間に1時間以上経っていたのでした。
こうやって、フラリと訪れた一言さんと立ち話してくれるような方も、最近では珍しいよなぁと思いましたね。
それに、日本製にこだわった品揃えが私としては嬉しい限りだったのと、懐かしい雰囲気の器も多々あってテンションも上がりました。
万古焼の耐熱土瓶との出会い
こうして、私は新しい土鍋を選んでお会計をしよう…としたその瞬間、ふと、本当にふと、目に留まったのが萬古焼の耐熱土瓶でした。
長話してずっと店内にいたのに、会計をする直前になってその存在に呼び止められたかのような感覚。
そして、これはある意味「一目惚れ」だったんだと思います。
あ、これも欲しい、って言うか、これも買う、と即決でした。(思わず商品棚に貼り付けてあった説明の写真をお願いして撮らせていただきました。)
一目惚れの最初の理由は、そのフォルム。
黒光りした重厚感、絵になるとはまさにこのこと。
そして、どっしりしたその姿はいかにも美味しいお茶を淹れられそうに見えたのです。
こうして、念願の新しい土鍋と、迷うことなく万古焼の耐熱土瓶を手に入れた私は、ずっしりと重い土鍋と土瓶を両手に1つづつ携えて手がちぎれそうになりながらも頑張って家までもって帰ったのでした。
カウンターの主となる
我が家は本当によくお茶を飲むものですから(水はちょっと味気なく感じるから、麦茶やはとむぎ茶をメインにお茶全般です)、やかんでお湯を沸かしてはそこに茶こしボールに入れた茶葉を投入し、やかんのままお茶をカウンターの上に置いて、いつでも飲めるようにしてあります。
飲んでは沸かして、飲んでは沸かして、お茶は冷したくないので熱々~常温で、でもすぐに飲み切るので大丈夫です。
冬場は普通のやかんより長く温かさが保たれるのも嬉しいところ。
耐熱土瓶が来るまでは、まるで運動部の部室のようにステンレスやアルミニウムのやかんがカウンターの上にドンと鎮座していたんですね。
ビジュアルも風情もヘッタクレも無いと言うか。
なのでこの万古焼の耐熱土瓶を見た時、これがカウンターの上にあったらと想像して「素敵じゃないのぉぉぉ!」と一目惚れしてしまったと言うわけです。
こうして、あれから5年程たった今もこの万古焼の耐熱土瓶は毎日我が家のカウンターの主として君臨していて、一緒に買った土鍋と共に活躍してくれています。
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