ないものねだり

エッセイ

私が赤ん坊の頃は限りなく鎌倉市の大船駅に近い横浜市で暮らしていて、今ある実家は限りなく東京都に近い横浜市にあるので、一応どちらもギリギリ横浜市ではあるので、私はいわゆる「浜っ子」と言うことになるみたい。

そして、今の実家がある沿線はいわゆる新興住宅地で、街を作るために先に線路を通して、街に道路を整備してから、どんどん家が建っていったような場所です。

そんな地域だったので、父や母が実家を建てた時代は周りも日本全国から移り住んで来たファミリー世帯が多かったので、昔からその土地で暮らしてきたような地元の人はほとんどいませんでした。

たまに地元の人がいるとしたら、元々が大地主さんで、家の敷地がとんでもなく広くて頑丈で立派ななまこ壁で囲われているお屋敷だったり、大袈裟でも何でもなくて、まるでまんが日本昔ばなしに出てくる庄屋さんのような家が小高い丘の中腹にドーンと鎮座していたりするので、とても分かりやすかったです。笑

こうして移り住む人が増えれば必然的に子供の人数も増えるので、最終的には飽和状態になって学区の中学校では校庭の一角に3階建てのプレハブ校舎を建てて何とか子供たちを受け入れていたほどでした。

そんな感じで、私の親世代の人たちが次から次へと家を建てて移り住み子供を育てた街でしたが、その子供たちが成長して親元から独立した近年、この沿線の高齢化と空き家問題はちょっと切実みたいです。

そして、空き家問題に拍車をかけているのが、親が残した家にまつわる相続税です。

 

私が幼い頃に今の実家の所に引っ越してきた頃って、まだまだ山や森を切り開いてズドーンと道路を張り巡らせただけの開発途中の野っ原みたいな場所が多くて、それなりに自然も残っていたので、はっきり言ってしまえば田舎だったわけです。

近所の同級生の家に遊びに行かせてもらえば、庭で飼っているアヒルが狸に襲われそうになってギャーギャー騒いで、慌てて庭に飛び出して救出したこともあったし。

高校の周辺では大きなお屋敷から鶏などが脱走して来て、そこかしこにある宅地と言う名の整備された空き地で野生化し、奴らはのびのびと空き地を闊歩していましたし、時には学校の中まで入ってきたこともあって、私は一度、部室へ向かう途中の人の少なくなった放課後の校舎で、それはそれは大きな雄鶏と鉢合わせしてしまって、ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!とこちらに突進んしてきて全力で追いかけられたこともあったし。

私が陸上部で短距をやっていて良かったと思ったのは、この時が最初で最後です(TT)

そんな昔の景色を知っている私たちなので、今でこそ沿線の駅前のとある一部の地域などがお洒落な街とかセレブな人が住んでいる駅とかテレビで紹介されたりしているのを見ると、ちょっと笑ってしまいます。

移り住んだ若い奥様がくるくる巻き髪のピンヒールで「週末になるとご近所さんを招いて庭でガーデンバーベキューをしたり、ホームパーティーを楽しんでいます。うふふ♪」なんてインタビューに答えているのを見て、「ガーデンバーベキューねぇ…ホームパーティーねぇ…その辺ってただの草っ原だったんだよ…ε- (´ー`*)フッ あなたもどデカい雄鶏に全力で追いかけられてみては?狸にバーベキューの食材を盗まれてみては?」なんてことが頭の中をよぎります。笑

なので、マツコ・デラックスさんが実家のある沿線を毛嫌いしている話には、ちょっと共感できたりする部分もあるのです。

 

そんなこんなでいつの間にか土地の価格が上がりました。

そして、親世代が年老いて次々と家を手放した今、子供たち世代にのしかかってくるのが、重い相続税と言うわけです。

思い出の実家を保存または自分たちが実家を引き継いで住みたくても、相続税が高くて払えないから実家を売るしかない、みたいなことも多いみたい。

こうして加速する、この町で生まれ育った私たち子供世代が散り散りとなって、知り合いたちが姿を消して行ったこの感じ。

地元には懐かしい友人たちはほぼいないし。

親世代はすでに他界したり、高齢になって施設に入ったり子供たちの家で暮らすようになったりして家を手放したりしているし。

新興住宅地で暮らしてきた親たちには、近所には親戚たちはいませんしね。

帰省して久しぶりに親や親戚に会ってお墓参りをしてとか、そーゆーことが出来ないので、「我が故郷」感が残念ながら無いのです。

帰省ラッシュは大変だなと思いつつ、帰省とか、地元感とか、友達との再会とか、うらやましく感じます。

ないものねだりです。

自分たちが暮らす街と故郷が遠いと、それはそれで色々と大変だったりもすることは、夫の実家が高知県だったので大なり小なり分かってはいるつもりですが、それでもやっぱり、帰省して心身ともに充電して帰ってくる感じを味わってみたいなぁと憧れます。

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