桜烏

エッセイ

我が家が暮らすマンションの周りはちょっとした公園になっていて、道路に面した公園の周りの街路樹は桜の木が植えられています。

マンションの建設と共に公園も作られたため、マンションが完成して引っ越して来たばかりの頃は、植えられたばかりの桜の木もまだ細くて小さくて、人間に例えるならば中学生くらいな感じ?でしたが(笑)、引っ越してきて20年以上経った今は、桜たちも気づけばだいぶ立派に成長して大きく枝葉を広げています。

なので、マンションから外に出ると右へ行っても左へ行っても桜の木があって、春には桜の花、夏には緑、秋には紅葉して、冬は葉を落とし、また春になれば桜の花が咲いて、それが私にとっては日々の暮らしの中で一番身近に四季を感じることができる景色です。

そして、寒さがまだ残る初春に蕾がどんどん膨らんできて、ポップコーンが弾けるように花が咲きだすと、私も日本人のはしくれとして嬉しく感じます。

 

そんなマンションの周りの桜の木の中に、ことさら大きくて立派な桜の木があります。

最寄り駅に向かう方面の道沿いにあるその桜の木は、咲き誇る桜の美しさも凄いんですけど、私はもう1つ別の理由でこの木が大好きなのです。

実は、つがいと思われる2羽の烏が、この桜の木を寝床にしているのです。

先代の愛犬と一緒に散歩していた頃から見かけていたので、もう10年くらい前から住み着いているのですが、この2羽の烏は、春は咲き誇る桜の花の中で眠り、夏は青々と茂る桜の葉の中の木陰で過ごし、秋は赤や黄色に紅葉した美しい桜の葉の中で眠り、冬は葉を全て落として枝しかなくなった桜の木でどんなに寒い日でも必ず2羽で過ごし、この桜の木から離れることがないのです。

 

今年も桜の木が葉を落としたので彼らの寝ている姿が丸見えになる季節がやってきまして、先日も出かけた帰りにこの桜の木を見上げてみたら、相変わらず仲良く2羽で枝にとまっている姿が街灯に照らし出されて見えたので、今年も元気だったのね~とホッとしました。

でも、公園の中には常緑樹もあるので、寒い時期とか、雨や雪の日とかくらいは、雨風をしのげる木に移動して寝ればいいのにと思ったりもするんですけど、彼らは頑なにその桜の木で10年近く暮らしています。

桜に烏、ちょっとミスマッチなような気もするけど、桜の木で安心して寝ている姿を見かける度に、これからもずっと2羽で元気でいてくれよ、と思いつつ。

我が家では彼らのことを『桜烏』と名付け、「今日も桜烏いたよ!」「お!マジで!」な~んて話をしています。笑

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